Book Impression Index

西澤保彦 感想リスト
解体諸因 【感想】 短編集[タック・シリーズ] 1995/01 講談社ノベルス
1997/12 講談社文庫
彼女が死んだ夜 【感想】 長編[タック・シリーズ] 1996/08 角川書店
2000/05 角川文庫
麦酒の家の冒険 【感想】 長編[タック・シリーズ] 1996/11 講談社ノベルス
2000/06 講談社文庫
仔羊たちの聖夜 【感想】 長編[タック・シリーズ] 1997/08 角川書店
2001/08 角川文庫
スコッチ・ゲーム 【感想】 長編[タック・シリーズ] 1998/03 角川書店
2002/05 角川文庫
黄金色の祈り 【感想】 長編 1999/03 文芸春秋
2003/11 文春文庫
夢幻巡礼 【感想】 長編[チョーモンイン・シリーズ] 1999/09 講談社ノベルス
2004/10 講談社文庫
転・送・密・室 【感想】 短編集[チョーモンイン・シリーズ] 2000/12 講談社ノベルス
2005/02 講談社文庫
夏の夜会 【感想】 長編 2001/09 カッパノベルス
2005/06 光文社文庫
異邦人−fusion 【感想】 長編 2001/10 集英社
2005/01 集英社文庫
両性具有迷宮 【感想】 長編[森奈津子シリーズ] 2001/12 双葉社
2005/03 双葉文庫
人形幻戯 【感想】 短編集[チョーモンイン・シリーズ] 2002/08 講談社ノベルス
2005/08 講談社文庫
黒の貴婦人 【感想】 短編集[タック・シリーズ] 2003/11 幻冬舎
2005/10 幻冬舎文庫

解体諸因
【内容】
バラバラ殺人がテーマのミステリを集めた短編集。タックこと匠千暁が初登場。

【感想】
3度目くらいの再読。なんとなくタックシリーズを通して読みたくなり、久々に読み返してみた。これってタックとボアン先輩と、一緒に出てくる話がないのね。実はどこかで仲違い?と思ったが、思い出す場面があるのでそれはなさそうだし。タカチやウサコは現在では全く出てこないのね。「依存」があんな終わり方なので、その後が気になっているのです。

物語としては全体的にトリッキーで、「へー、ほー」というくらいなんだけど。

そして、なーんと「朝霧」の中の「山眠る」で(どこかで読んだ)と思ったネタ元がここにあった。ただ記憶と違ったのは、そのものずばりが原因だったのではなく、「○○ではない」とされた内容だったこと。ひょっとして他にもあるのだろうか。うーむ。

(2004.06.07)

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彼女が死んだ夜
【内容】
門限6時の環境で厳格に育てられたハコちゃんこと浜口美緒は、両親を説得してアメリカ旅行の許可を得た。その出発前夜、両親がいない隙に送別会に出たハコちゃんが帰宅すると、部屋の中で見知らぬ女性が死んでいた。どうしても旅行に行きたいハコちゃんは、男性陣を呼びつけ、とんでもない要求を出す。タック、タカチ、ボアン、ウサコ、キャンパス四人組が挑む第一の事件。

【感想】
タック・シリーズ長編第一作。解説にもあったけど、キャラたちのユーモラスな描写っぷりとは裏腹に、暗く重い結末。哀れだなぁ。

なんでこんなにキャラクター達の会話中心の話が成り立つのだろう?と思ったが、現実問題としての事件解決のために動く場面が少ないからなんだね。いわゆる素人が探偵役のミステリーって、本人達が事件の中にいたり、警察と関係があって解決のために動いていたりするものが多い。そうなると、その関わりだとか経緯だとか説明が必要になるけど、それが要らないんだもの。

第一作はタックの一人称で、本人は至って普通のキャラクターに見える。ここではまだ、ボアン先輩もタカチも、ステレオタイプ的描写しかないね。「依存」の頃になると結構変わってきてるのだけどね。

解説にあった、クライグ・ライスの「素晴らしき犯罪」って読んでみようかなぁ。

(2004.06.16)

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麦酒の家の冒険
【内容】
ドライブの途中でおなじみの4人組が迷い込んだ山荘には、1台のベッドと冷蔵庫しかなかった。冷蔵庫にぎっしり詰まったビールを飲みながら、彼らは次々と事件の可能性を挙げ、推理合戦を繰り広げる。

【感想】
タック・シリーズ長編第二作。ビールは私も好きだけど、ここまで大量に飲んだら、いくら何でも気持ち悪くなりそうだ。。。ましてや疲れ切った体につまみ無しな訳だからね。

忘れていたけど、最初の二作はいずれも『安楽椅子探偵』であるところのタックが、最終的にはタカチに対して真相を言い当てる、というスタイルだったんだ。しかし、私は同じ状況で同じ証拠を提示されたとしても、ここまで色々なストーリーを思いつく自信はないなぁ。そこまで想像力豊かではないよ。

あまりにも色々な説が展開されて、最終的にどういう話だったか、というのがよくわからん。が、この小説の場合、そちらの方がおまけみたいなものなのかも。

(2004.06.18)

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仔羊たちの聖夜
【内容】
タック、タカチ、ボアン先輩が初めて顔を合わせ、酒席を共にした夜、彼らの目の前にマンションの最上階から女性が飛び降りた。一年後、ある出来事をきっかけに、彼らは事件の謎に分け入っていくことになる。

【感想】
『キャンパス3人組の酩酊推理!』『抱腹絶倒の探偵ミステリー!』などとあるが、この内容紹介はなんだかミスマッチ。そんなに軽い物語ではない。

この話から「スコッチ・ゲーム」や「依存」につながる伏線めいたものが登場する。タカチの家族との葛藤への想いはもちろん、タックの方にもちらっと記述がある。それを除いても非常に醜い感情が事件の主原因となっているし、発端となった女性をめぐる真相も悲しく誤解を残したままに終わる。

後味の悪い話だったんだなぁ。この『誤解を残したままに終わる』ってところが、特にスッキリしないよ。私が登場人物に説明してまわりたいくらいだ。。。

(2004.07.09)

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スコッチ・ゲーム
【内容】
キャンパス四人組が、高校卒業を控えたタカチが巻き込まれた事件の真相を推理する。タカチが寮に帰ると、彼女の同性の恋人が殺されていた。タカチは教師の1人を疑うが。。。

【感想】
人間のナルシズムや醜い心の動きを容赦なく掘り下げた殺人の動機。それはそれで興味深いけど、本当にそれが動機となりうるのか?というと、あまりピンと来ない。私自身はどちらかというと、他者との心的な関わりをあまり密にしない方なのかもしれない。だからなのかな。

タックの推理力はすごいなぁ。私はあまり考えながら読まない方だけど、常に謎を解いてやろうという姿勢で推理小説を読む人の場合、解ける真相なのだろうか。それも謎だ。

最後のタカチの台詞がいいなぁ。あまり時間が空かないうちに「依存」を読まなきゃ。

(2004.07.27)

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黄金色の祈り
【内容】
中学の同級生が謎の変死をとげ、1年以上たってから廃校になった校舎で発見された。遺体のそばには中学時代に盗まれたアルトサックスがあった。他人の目を気にし、人をうらやみ、成功することばかり考えている「僕」は、自分が思うように進められなかった人生を変えるため、この事件を題材に小説を発表するが。。。

【感想】
う〜〜〜〜〜〜ん。

どうなんでしょう?これってフェア??

最後まで読んだ後、ところどころ読み返してみたのだけど、(これはフェアだな、やられた)と思うことが、いまいち出来ない。どうなんだろうなぁ。あまり考えずに読んでいたというのもあるけど、ちょっと思いつかなかったね。

ミステリ部分は置いておいて、心情的な部分はちょっと沁みるものがある人は多いのではないだろうか。性に対する感情、自分自身に映る自分と他人から見た自分とのギャップに苦しむ心情、「自分は特別な人間だ」という自負をつい持ってしまう心理、といったものは、私にもなんとなくわかる。それでも(私を含めて)大抵の人間は、そんな感情は『常識』の下に隠して、普通の人生を歩んでいくわけだ。

そこをすり抜けて、最後になってようやく実情を受け入れようとしている主人公、この先どうなるのだろう。苦い結末と示されない未来が、なんとも落ち着かない感覚だけを残す。

読後感は良くないが、つまらないと切り捨てることは出来ない、そんな感想を持った物語でした。

(2004.05.19)

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夢幻巡礼
【内容】
警察官でありながら、罪悪感を抱くこと無く殺人を重ねる男、奈蔵渉。女性上司である能解警部とともに、十年前に殺人現場から消えた男の行方を追って、現場を訪れるが。。。

【感想】
おなじみ『チョーモンインシリーズ』の番外編であるが、ずいぶんと趣きが異なる。超自然現象を扱っているという点は共通しているけどね。しかしながら、謎解きは最後の方でバタバタと急に出てくる感じで、それまでは殺人鬼の心象や犯行の軌跡がそのまま綴られるだけだったので、ミステリでもあったんだ〜と少し驚いた。その謎解きは、まぁ面白かったけど。

親と子の歪んだ関係って、西澤さんの小説によく出てくるよね。中でもこの小説は、ものすごくドロドロしていて、かなり気持ちが悪い。おまけに内容が内容だし、描写も血まみれのベトベト・ドロドロで、想像すると結構辛い。シリーズ本編のユーモアも可愛さもなく、読中感(?)も読後感も悪いのだけど、本編への重要な伏線になっているようで、また読み返すこともあるのだろうな。

(2005.06.06)

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転・送・密・室
【内容】
チョーモンイン(見習)・神麻嗣子、美人警部匡緒、売れないミステリ作家・保科匡緒と保科の分かれた妻・聡子、神麻の先輩チョーモンインなどなど、にぎやかな面々が超能力の絡んだ不可思議な事件を解決するおなじみのシリーズ。

【感想】
結末に向けて、なんだか色々と伏線が張られているようで。

最後のアレはどこにどうつながるのだろうなぁ。最初に戻ったってことだよね?もう一度通して読んでみた方がよいような気もする。しかし、色々なところで伏線ばっかり示されるのが、段々飽きてきたので早く決着をつけて欲しいものだ。このシリーズは楽しいので、終わるのはちょっと惜しいけどね。

しかし相変わらず、事件の真相や隠された人の心の闇などが、楽しげな雰囲気にそぐわないんだよね。それが面白いといえば面白いのだけど。

(2005.07.15)

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夏の夜会
【内容】
祖母の葬儀のために、久しぶりに帰省した主人公は、小学校の同級生の結婚式にも出席し、再会した同級生らと飲みに行くことになった。昔の思い出を語り合ううちに、話題は30年前に女性教師が殺された事件へと発展した。次々とよみがえる記憶、明らかになる真実。果たして事件の真相は?

【感想】
この人のよくあるパターンの1つかな?記憶というものは曖昧なものであり、人は皆自分の都合の良いように改竄するものだ、ということなのだけど、実際はここまで強烈な体験が全く異なる記憶に変わるということはあるのでしょうかね。子供だから、強烈だからこそあるのだ、ということなのかもしれないけど。

このパターンは、読むうちにと次々と話が展開し、面白いと言えば面白いのだけど、何か少し離れたところからぼんやりと観察しているだけのような気にもなる。「ミステリーを読んでいる」という感じがしないのですよね。私はもう少し話に入り込んで読書をしたいなぁ。

(2005.10.19)

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異邦人−fusion
【内容】
「わたし」は年末の帰郷で地元の空港に着いた。実家に電話すると何故か出たのは23年前に何者かに殺された父(実際には養父で伯父)だった。タイムスリップしたことに気づいた「わたし」は姉のため、自分のために父の死を止めようとする。

【感想】
相変わらず主人公は内省的で、特殊な資質というか性癖をもった家族が登場する。タイムスリップについても細かい設定がきっちりなされており、少々説明的なところもこの人らしい。

ストーリーとしては「ちょっと良い」もしくは「普通」かなぁ。タイムスリップものは結構好きなのだけど、これにはそれほど感動するような内容もなかったみたい。勿論、色々なことが上手くいくように世界を変えることができたのは良かったけどね。それにしても、父殺害の真犯人、恥ずかしながら解説されるまで全く見当がつかなかった。。。というか考えて読んでいなかった。もっと早く気づいても良かった筈なのになぁ。

(2005.08.09)

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両性具有迷宮
【内容】
バイセクシャルにしてレズビアン小説を書いている作家・森奈津子は、ある夜立ち寄ったコンビニで怪光線を浴びた。その結果、なんと男性器が生えてしまう。しかも、その時その場に居合わせた女性達が次々に殺される事態となり、奈津子は事件の解明に乗り出す。

【感想】
かなり滅茶苦茶な話で、シモネタな描写も多いし、主人公の性格はとっちらかってるし、ミステリ部分もあるけど、とってつけたように感じられるしで、面白くないこともないが、あまり真面目に読めない小説だった。「センス・オブ・ジェンダー」とかいう賞をもらったとのことだが、あまり深い意味付けを考える気にはなれなかったなぁ。

(2005.08.22)

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人形幻戯
【内容】
チョーモンイン(見習)・神麻嗣子、美人警部・能解匡緒、売れないミステリ作家・保科匡緒、保科の分かれた妻・遅塚聡子、神麻の先輩チョーモンイン・神余響子らが、超能力の絡んだ不可思議な事件を解決するおなじみのシリーズ短編集。本作はどちらかというと、関係者の視点からの作品が多い。

【感想】
今回は、関係者の視点から書いたものが多く、より一層、心理面のダークさが際立つ話が多いなぁ。それはそれで面白いし、論理そのものは明解なので良いのだけど。あと、全体への伏線も多く、早く本編を進めてよ〜〜〜と思ってしまうのであった。

(2005.09.08)

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黒の貴婦人
【内容】
わがままお坊ちゃまのパーティにやってきた女子大生が殺された...「招かれざる死者」、タックたち行きつけの飲み屋でいつも見かける女性の謎...「黒の貴婦人」、高原で行われた女子4人『合宿』で男が死んだ...「スプリット・イメージ」、逝ってしまった高齢の『愛人』が残したジャケットに託されたメッセージは...「ジャケットの地図」、ウサコの親戚の結婚式で発生したご祝儀泥棒の真実は...「夜空の向こう側」。

【感想】
相変わらず内省的な内容が多いけど、今回のストーリーは結構どれも楽しめたな。「依存」後のタックとタカチの関係や、大学卒業後の2人の様子が、直接ではなかったけど伺えるあたりも面白かった。その辺もしっかり描写した本編の長編が読みたいものですが。

(2005.12.20)

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